52回専門 問8 温暖・寒冷・梅雨前線について
問8 前線について述べた次の文(a)~(d)の正誤について,下記の1~5の中から正しいものを一つ選べ。
- (a)温暖前線面の傾きは寒冷前線面より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖前線上とその直近では積乱雲は発生しない。
- (b)寒冷前線に伴う降水域は温暖前線の降水域に比べて幅が広いことが多く,積乱雲が発生して雷や突風などの現象を伴うことがある。
- (c)西日本以西の梅雨前線では,一般に,下層の南北方向の温度傾度が大きく,水蒸気量の傾度も大きい。
- (d)梅雨前線に伴う大雨の際には,前線の南側にしばしば下層ジェットと呼ばれる強風帯がみられる。○
- (a)大気の状態が不安定になれば、当然に積乱雲が発生します。よって、「誤」
- (b)寒冷前線面の長さは、温暖前線よりも短い。よって、「誤」
- (c)西日本以西の梅雨前線においては、温暖で乾燥した大陸からの気団と高温多湿な南太平洋からの風との接点なので、気温差はあまり大きくありませんが、水蒸気量の傾度は大きいのです。その差は、相当温位の差として現れます。よって、「誤」
- (d)西南西の強い風が吹くことが多いです。よって、「正」

正解は④ dのみ正しい
53s8 積乱雲およびそれに伴う現象 竜巻やダウンバースト、ガストフロント
問8 積乱雲およびそれに伴う現象について述べた次の文(a)~(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から1つ選べ。
- (a)日本において,発達した積乱雲がもたらす竜巻やダウンバースト,ガストフロントは,いずれも沿岸部で多く発生する傾向がある。×
- (b)発達した積乱雲に伴う冷たい下降気流が地表面にぶつかり周辺に吹き出すとき,その先端部で地表付近の湿った暖かい空気が持ち上げられて,新たな積乱雲が発生することがある。○※ダウンバーストのこと
- (c)衛星画像で,対流圏中·上層の一般風の風上側に向かって,次第に細く毛筆状あるいはにんじん状になっている雲域をにんじん状雲と呼び,特に先の細くなった部分で激しい雨,突風,雷,降ひょうなどの顕著現象を伴うことが多い。○
- (a)ダウンバーストとガストフロントは、沿岸部に多いとは言えません。よって、「誤」
- (b)よって、「正」
- (c)よって、「正」
(a)について


正解は④
54s8 気象衛星赤外線画像
問8 図は,西日本に上陸し,その後勢力を弱めて日本海に進んだ台風の気象衛星赤外画像である。このような台風について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から1つ選べ。
- (a)この台風は,眼が不明瞭化し軸対称性も崩れてきているが,周辺には活発な対流雲を伴っているため,引き続き大雨への警戒が必要である。
- (b)この台風のように,台風が上陸後に勢力を弱める主な原因は,水蒸気の供給が減少し,また,陸地の摩擦によりエネルギーが失われるためである。
- (c)この図のように台風が日本付近を北上するときに,台風の軸対称性が崩れる主な原因は,北上するにつれてコリオリカが大きくなり,傾度風のバランスが変化するためである。
- (d)この図のような,日本列島に接近·上陸し大きな影響を及ぼす可能性が非常に高い台風については,気象庁は1日先までの台風の予報を最短1時間ごとに発表する。


- (a)台風が温帯低気圧に変化しようとして途中段階です。温帯低気圧に構造が変化したときには、中心から離れた場所で雨や風が強まることがあるので、引き続き警戒が必要です。よって、「正」
- (b)上陸すると、エネルギー源である水蒸気の供給が遮断され、山地や樹木との摩擦によって勢力が損なわれるためです。よって、「正」
- (c)傾度風とは、下図のように台風本体の風の原理を表すもので、バランスが変化するとは、何を言っているのか分かりません。北上するにつれてコリオリカが大きくならないでしょう。よって、「誤」
- (d)1日先までの台風の予報を3時間ごとに発表します。よって、「誤」
正解は②
55s8 北半球の発達中の低気圧に伴う前線の一般的な特徴
問8 北半球の発達中の低気圧に伴う前線の一般的な特徴について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から1つ選べ。
- (a)温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇しており,寒気と暖気の間には鉛直方向に成層が不安定な転移層が見られる。
- (b)地上天気図では,寒冷前線の転移層が地表面と交わる寒気側の境界を寒冷前線とする。
- (c)温暖前線面の傾きは寒冷前線面より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖前線面上では層状の雲が形成されやすい。○
- (d)温暖前線のすぐ北側にある地点では,高度があがるとともに風向は時計回りに変化している。○

- (a)転移層は、状態曲線で逆転層となるので、不安定ではなく絶対安定です。よって、「誤」危ない
- (b)上図のように、暖気側との境界が地上前線になります。よって、「誤」
- (c)問題文のとおり、温暖前線面の上では層状の雲が形成されやすいです。よって、「正」
- (d)温暖前線の北側に位置する潮岬の状態曲線ですが、風向が高度上昇とともに時計回りに変化して、暖気移流であることを示しています。よって、「正」
(c)について

(d)について

正解は④
56s8 気象衛星画像(可視、赤外)
57s8 冬季の日本周辺の降水に関わる現象 離岸距離 沈降性逆転層
問8 冬季の日本周辺の降水に関わる現象について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合せとして正しいものを,下記の1~5の中から1つ選べ。
- (a)冬型の気圧配置のときに,日本海上で筋状の対流雲ができ始める地点と大陸の海岸線との間の距離は,海面水温や風速など他の条件が同じならば,大陸から吹き出す大気の下層の気温が低いほど短い。
- (b)冬型の気圧配置のとき,大陸からの寒気の吹き出しにより形成される筋状の対流雲は,強い不安定により発達して雲頂が対流圏界面に達することが多い。
- (c)上層の気圧の谷が日本列島の東に抜け,低気圧が日本の東海上や千島方面で発達して,本州付近では上空に寒気が入り,地上の等圧線が南北の縦縞に並ぶときには,日本海側の山沿いの地方を中心に山雪型と呼ばれる大雪になることが多い。
- (d)地上気温が0℃以上であっても降雨ではなく降雪となることがある。この場合,降雨になるか降雪になるかは,地上付近の気温とともに湿度も影響し,気温が同じであれば湿度が低いほど雪になる可能性が高くなる。
- (a)離岸距離の話。大陸から吹き出す大気の下層の気温が低いほど短い。よって、「正」
- (b)沈降性逆転層によって、雲頂高度は低い。よって、「誤」
- (c)問題文のとおり。よって、「正」
- (d)問題文のとおり。「地上気温と相対湿度による降水の型判別図」よって、「正」
(b)について

(d)について


正解は②
58s8 日本周辺に現れる高気圧
問8 日本周辺に現れる高気圧について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。
- (a)冬にシベリア付近に現れるシベリア高気圧は、対流圏の下層から上層まで寒冷な空気で満たされた、背の高い高気圧である。
- (b)春や秋に日本付近を西から東に通過する移動性高気圧は、高気圧の中心の西側では上·中層雲が広がっていることがしばしばある。
- (c)初夏にオホーツク海付近に現れるオホーツク海高気圧は、下層に低温·湿潤な気団を伴った停滞性の高気圧であるが、上空にはブロッキング高気圧が存在することが多く、通常、このブロッキング高気圧の中心付近は周辺と比べて高温になっている。
- (a)背の高い高気圧である。よって、「誤」
- (b)問題文のとおり。よって、「正」
- (c)問題文のとおり。よって、「正」
それぞれの高気圧には特徴があります。簡単にまとめると以下のようになります:
- シベリア高気圧:冬にシベリア地域で発生する強い高気圧。冷たく乾燥した空気を持ち、日本に寒波をもたらします。西高東低の気圧配置を形成し、日本海側に雪を降らせる要因になります。
- オホーツク高気圧:夏の終わりから秋にかけてオホーツク海付近で発生する高気圧。冷たく湿った空気を持ち、やませ(冷たい北東風)を発生させ、東日本の気温を下げることがあります。
- 移動性高気圧:春や秋に見られる高気圧で、偏西風に乗って西から東へ移動します。晴天をもたらしますが、周期的に低気圧と交互に訪れるため、天気が変わりやすいのが特徴です。
- 太平洋高気圧:夏に勢力を強める高気圧で、日本の暑い夏を作る要因になります。湿った暖かい空気を持ち、強い日差しと高温をもたらします。
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正解は④
59s8 日本付近に現れる前線や温帯低気圧
問8 日本付近に現れる前線や温帯低気圧について述べた次の文(a)~(d)の正誤について、下記の1~5の中から正しいものを1つ選べ。
- (a)寒冷前線がある地点を通過する場合、一般にその地点では、風向は時計回りに変化し、気温や露点温度は下降する。
- (b)温暖前線と寒冷前線の間の暖域に寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が見られることがあり、これが通過すると寒冷前線が通過した時と似た風向変化をすることがある。
- (c)発達中の温帯低気圧の進行方向後面では、下層への強い寒気の流入に伴って層厚が減少し、500hPa面 など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇する。
- (d)一般に、温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたときは、低気圧の一生の中で中心気圧が最も低く、最盛期の段階にあたる。
- (a)寒冷前線が通過すると風向が時計回りに変化する理由は、低気圧の風の流れと寒気の移動によるものです。
- 低気圧の風の流れ 北半球では、低気圧の周囲では反時計回りに風が吹き込みます。一方、高気圧の周囲では時計回りに風が吹き出します。寒冷前線は低気圧の後面に位置し、前線が通過すると、低気圧の影響が弱まり、高気圧の影響が強くなるため、風向が時計回りに変化します。
- 寒気の移動 寒冷前線は、冷たい空気が暖かい空気を押し上げながら進むため、前線通過前は暖かい空気が南寄りの風をもたらします。しかし、前線が通過すると、冷たい空気が流れ込むため、風向が北寄りに変化します。この変化が時計回りの風向変化として観測されるのです。
- 地上の風の変化 地上では、寒冷前線の通過前は南西風が吹いていることが多いですが、通過後は北西風へと変化します。この変化は、前線の進行方向や気圧配置によって決まります。よって、「正」
- (b)温暖前線と寒冷前線に挟まれた暖域内では、暖かく湿った空気が流れ込んでいるため、大気の鉛直安定度が小さく積乱雲が発生しやすく、激しい降水をもたらすことがあります。テーパリングクラウドや本文にありますように寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が発生することがあり、雲列が通過しますと寒冷前線の通過に先んじて寒冷前線が通過したときと似た風向変化をすることがあります。よって、「正」
- (c)地上付近を含む下層は寒気が入りますので空気密度が大きくなり気圧が上昇します。よって、「正」
- (d)問題の「温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたとき」を、上図における最盛期の、閉塞が始まった段階を含む一定期間に該当すると考えた場合は、その一定期間の中のどこかの瞬間で温帯低気圧の中心気圧が最も低くなると考えられ、本文の内容は正しいとすることができます。よって、「正」※しかし、「とき」をまさに閉塞前線が形成され始める瞬間と考えた場合は、その瞬間に温帯低気圧の中心気圧が最も低くなるとは限らないと解釈することもできますので、この場合、本文の内容は誤りとすることもできます。

正解は④⑤
60s8 日本の天気に影響を及ぼす太平洋高気圧
問8 日本の天気に影響を及ぼす太平洋高気圧について述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。
太平洋高気圧は亜熱帯高気圧の1つで、(a)東西方向の水平スケールが3000km程度の総観規模の現象である。太平洋高気圧のような亜熱帯高気圧は、(b)ハドレー循環の下降流域に位置し、対流圏下層では発散域となっている。○また、太平洋高気圧の圏内では、(c)海面からの水蒸気の供給により、対流圏下層から上層までのほとんどの高度で、相対湿度が高くなっている。
盛夏期に、太平洋高気圧が北西に張り出して本州付近を広く覆い、さらに対流圏上層の高気圧とも重なると、(d)午後に積乱雲が発達して広い範囲で雷雨になることが多い。
- (a)盛夏期における太平洋高気圧は、ハワイ諸島付近を中心にアメリカ西海岸から日本付近にかけて北部太平洋を広く覆い、その水平スケールは3000kmを上回ります。よって、「誤」
- (b)低緯度におけるハドレー循環では、熱帯収束帯での活発な対流活動に伴って上昇流となり、上空まで運ばれた空気は北に運ばれて北緯30°付近で下降流となっています。亜熱帯高気圧はこの下降流によって形成されています。したがって、太平洋高気圧に覆われている対流圏下層においては発散域となります。よって、「正」
- (c)ハドレー循環の下降流域にありますので、空気が乾燥していることが多くなります。よって、「誤」
- (d)盛夏期に太平洋高気圧が平年よりも強く日本付近を覆う場合は天気が安定し、高温・多照の天気が持続しやすくなります。さらに、対流圏上層の高気圧とは「チベット高気圧」のことを指しますが、この高気圧が日本付近への張り出しが強いときは、太平洋高気圧との相乗効果でさらに高温・多照の天気が持続しやすくなります。一方、午後に積乱雲が発達して広い範囲で雷雨になることが多いときは、太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱く、そのため太平洋高気圧の縁辺部を回って、暖湿な空気が流入しやすく、また中・上層に冷たく乾燥した空気が流入しやすくなることから大気の成層が不安定になる場合です。よって、「誤」

正解は④
コメント
> 気象専門過去問52s8-63s8
どんどん進んでいるのは、理解が深まってあまり時間が必要とならないから?
効率的な学習体制となってきている。
以前に取り上げてくださった問題も入っているんですね。