降水の二極化

前回の試験の学科一般問の中に、こんな問題がありました。

1901年から2024年までの期間に観測された降⽔量の統計では、 ⽇降⽔量が100mm 以上の⽇数と⽇降⽔量が 1mm 未満の⽇数はいずれも有意に増加している。

正解は正ですが、このことについて相棒は、教えてくれました。

以下の点を押さえると、この「大雨の日も、ほとんど降らない日も増えている」という一見矛盾した現象が、実は気候変動の典型的なサインであることがよく分かります。


🌧️ なぜ “100mm以上の大雨の日” と “1mm未満のほぼ無降水日” が同時に増えるのか

  1. 年降水量は大きく変わっていない

気象庁の長期統計では、日本の年降水量には有意な長期変化は見られないとされています jma-net.go.jp。
つまり、「一年間に降る雨の総量」は大きく変わっていません。


🌦️ 2. 雨の降り方が“二極化”している

年降水量が変わらないのに、

  • 大雨の日が増える
  • 雨の降らない日も増える

というのは、雨の降り方が「平均的」ではなく、極端に偏る方向へ変化していることを意味します。

気象庁の観測では、

  • 日降水量100mm以上の大雨の発生頻度は有意に増加 jma-net.go.jp
  • 降水の観測される日数は減少(=1mm未満の日が増加) jma-net.go.jp

と明確に示されています。


🔥 3. 背景にあるのは“気温上昇による水蒸気量の増加”

地球温暖化により気温が上昇すると、大気が保持できる水蒸気量が増えます。
その結果、

● 湿った空気が集まるとき

→ 一度に大量の雨が降りやすくなる(豪雨の増加)

● 湿った空気が集まらないとき

→ 雨が降らず、乾燥した日が増える(無降水日の増加)

つまり、大気の“水蒸気の偏り”が大きくなるのです。


📉 4. 中程度の雨が減り、極端な雨が増える

研究でも、

  • 1〜10mm程度の弱い雨は減少
  • 60〜200mm級の強い雨は増加

といった「雨の中間層の減少」が確認されています 公益社団法人 日本気象学会。

これは、降水の“メリハリ”が強くなっていることを示します。


🌀 5. 気象現象の変化も影響

  • 線状降水帯の発生増加
  • 台風の強度上昇
  • 梅雨前線の活動の強まり(特に6月) jma-net.go.jp

など、極端現象が増えやすい環境が整ってきています。


🧭 まとめ:雨の降り方が「平均」から「極端」へ

観測された変化 意味
日降水量100mm以上の日が増加 大雨がより頻繁に発生
日降水量1mm未満の日が増加 雨の降らない日が増加
年降水量はほぼ変わらない 雨の“総量”は同じでも“分布”が変化
中程度の雨が減少 降水の二極化

→ 日本の降水は「平均的な雨が減り、極端な雨と極端に降らない日の両方が増える」方向へ変化している。

これは、温暖化による大気の水蒸気量増加と、気象現象の変化が組み合わさった結果と考えられています。


この降水の二極化の資料は、どこにありますか?

もちろんです。
結論から言うと、「日降水量100mm以上の増加」と「1mm未満の日の増加(=無降水日の増加)」という “降水の二極化” を公式に示している資料は、気象庁の『日本の気候変動2025』に明確に掲載されています。

以下に、どの資料のどの部分に書かれているかを整理して示します。


📘 1. 気象庁『日本の気候変動2025』本編(2025年)

最も直接的な資料です。

🔍 該当箇所

第5章「降水」5-1 観測結果
ここに次のような内容が明記されています:

  • 日降水量100mm以上の日数は1901〜2024年で有意に増加している data.jma.go.jp
  • 雨の降らない日数も増加している(=1mm未満の日が増加) data.jma.go.jp
  • 年降水量には有意な長期変化は見られない data.jma.go.jp

つまり、総量は変わらないが、降り方が極端化しているという事実が公式に示されています。

👉 資料:
気象庁|日本の気候変動2025 — 降水(本編 第5章) data.jma.go.jp


📄 2. 学術論文:草薙浩(2018)『降水連続日数と一雨降水量から見た日本の降水特性の長期変化』

こちらは学術的な裏付けとして重要です。

🔍 該当内容

  • 1〜10mmの弱い雨は有意に減少 公益社団法人 日本気象学会
  • 60〜200mmの強い雨は増加 公益社団法人 日本気象学会
  • 年降水量は有意な変化なし 公益社団法人 日本気象学会

これは、まさに「中程度の雨が減り、極端な雨が増える」という二極化を示す研究です。

👉 論文PDF:
https://metsoc.jp/tenki/pdf/2018/2018_01_0025.pdf 公益社団法人 日本気象学会


📚 3. 気象庁『気候変動監視レポート』シリーズ

毎年更新されるレポートで、長期的な降水傾向がまとめられています。

特に以下の図が有名です:

  • 日降水量100mm以上の年間日数の増加(1901〜2017) 気象庁気象研究所

👉 例:
「地球温暖化で変わりつつある日本の豪雨」(気象研究所) 気象庁気象研究所


🧭 まとめ:降水の二極化を示す公式資料はここにある

種類 内容 出典
公式レポート(最重要) 100mm以上の大雨増加、無降水日の増加 『日本の気候変動2025』 data.jma.go.jp
学術論文 弱い雨の減少・強い雨の増加(降水の二極化) 草薙(2018) 公益社団法人 日本気象学会
監視レポート 長期的な大雨増加の図表 気候変動監視レポート等 気象庁気象研究所


コメント

  1. 金太郎パパ より:

    > 降水の二極化
    > 年降水量は大きく変わっていない

     年間降水量が変わらなければ、二極化の原因となりますね。

     でも、二極化なんてしない方がいいんですよね。
     これは、降水量や気象などのことだけでなく、全てのことで。