①数値予報の誤差を予め把握するため、気象庁のメソアンサンブル予報では、初期値と側面境界値に少しずつ異なった誤差 (摂動) を加えた複数の予測を行っており、さらに 2023年3月からは、数値予報モデルの物理過程の不確実性を考慮するために、モデルアンサンブル手法の一つである確率的物理過程強制法が導入されている。
簡潔な解説 アンサンブル予報とは、初期値や境界条件に少しずつ異なる誤差(摂動)を加えて複数の予測(アンサンブルメンバー)を行い、将来の天気を確率的に予測する手法です。 気象庁のメソアンサンブル予報では、初期値と側面境界値に摂動を加えて予測を行っています。 さらに2023年3月からは、物理過程の不確実性も考慮するために、確率的物理過程強制法(SPPT法)が導入されました。 この手法では、気温や風などの変化量に小さな乱数を加えることで、モデルの不確実性を表現します。したがって、設問の内容は正しいです。


②アンサンブル予報を利用する際の留意点として、メンバー間のばらつきが大きい時は、気象要素の日々の変動が大きくなる予測であることを示している。
アンサンブル予報では、メンバー間のばらつきが 大きい 場合、初期値や物理過程に含まれる微小な誤差が時間の経過とともに 増幅 しやすい大気の状態であることを意味します。例えば、特定の予報時間においてメンバー間で予測値が 大きく異なる 場合、その時間の予測に含まれる不確実性が 大きく 、信頼度が 低い と考えられます。
逆に、メンバー間のばらつきが 小さい 場合、予測の信頼性が 高い とみなされます。したがって、アンサンブル予報を利用する際の留意点として、メンバー間のばらつきが大きい時は、「気象要素の日々の変動が大きくなる予測である」ではなく「 予測の不確実性が大きい 」ことを示していますので、答えは 誤 です。
③アンサンブル予報は、初期値に含まれる微小な誤差が時間の経過とともに成長することを利用し、微小な誤差を含んだ多数の初期値によって数値予報を実行し、その結果を統計処理して予報精度を向上させる数値予報の手法である。
アンサンブル予報 とは、数値予報モデルに初期値の小さな揺らぎ(摂動)を与えて複数の予測を行い、その集団(アンサンブル)から未来の大気の状態を 確率的に予測 する手法のことです。大気の状態は非常に複雑で、初期値のわずかな誤差が時間とともに大きくなって予報に影響を与えるため、複数の予報結果を比較することで 不確実性 を把握できます。これらの予報結果を 平均 することで、ランダムな誤差 を減らし、より精度の高い予報を得ることが可能です。したがって、アンサンブル予報は、初期値に含まれる微小な誤差が時間の経過とともに成長することを利用し、微小な誤差を含んだ多数の初期値によって数値予報を実行し、その結果を統計処理して予報精度を向上させる数値予報の手法ですので、答えは 正 です。
④アンサンブル予報で個々のメンバーの予報結果の差が大きいほど、現象の予報が困難であることがわかるので、このような場合は予報値として採用しない。
アンサンブル予報において、個々のメンバーの予報結果の差が 大きい ことは、現象の予報が 難しい ことを示しています。しかし、その差があるからといって予報値として 採用しないわけではありません。
むしろ、メンバー間の差の大きさは予報の 不確実性 を表しており、これを利用して現象が起こる 確率 を算出することができます。つまり、アンサンブル予報は複数の予報結果を統計的に分析し、最も起こりやすい現象 とその 発生確率 を示すことができるため、差が大きくても予報値として十分に活用できるのです。したがって、アンサンブル予報で個々のメンバーの予報結果の差が大きい場合、予報値として「採用しない」ではなく「 採用します 」ので、答えは 誤 です。
⑤アンサンブル予報の結果のスプレッドが大きい場合は、小さい場合に比べて予報の信頼度が低い。
スプレッド とは、アンサンブル予報における各メンバーの予測値のばらつきを示す指標です。
スプレッドが 小さい 場合は、予測結果がほぼ一致しているため、予報の信頼度が 高い と判断できます。一方、スプレッドが 大きい と予測結果にばらつきが大きく、実際の天気が予測範囲から外れる可能性も高くなるため、信頼度は 低く なります。つまり、スプレッドの大きさは予報の 不確実性 を示しており、スプレッドが 大きい ほど予報の信頼度は 低い ということですので、答えは 正 です。
⑥予報結果がある値の範囲をとる確率は、すべてのアンサンブルメンバーのうち予報値がその範囲に入るものの割合によって推定できる。
アンサンブル予報 では、複数の予報メンバーがそれぞれ異なる条件で予測を行い、その結果のばらつきから確率を推定します。例えば、全メンバーのうち 20% が「ある月の平均気温が平年より1℃高い」と予測した場合、その現象が起こる確率は 20% と考えられます。この方法は、予報の不確実性を 数値 で示すことができ、確率予報 として非常に有効です。
実際の気象業務でも、こうしたメンバーの割合をもとに 降水確率 や 台風の進路予想 などを算出し、リスク判断や意思決定に役立てています。
したがって、予報結果がある値の範囲をとる確率は、すべてのアンサンブルメンバーのうち予報値がその範囲に入るものの割合によって推定できますので、答えは 正 です。
⑦アンサンブル予報では、個々の数値予報の結果に含まれる系統的な誤差を減らすことができる。
アンサンブル予報の全てのメンバーは 同じ数値予報モデル を使っているため、モデルに内在する系統的な誤差は 共通して現れます。つまり、モデル地形の不完全さなどに起因する 系統的誤差 は、アンサンブルの平均をとっても 減らすことはできません。したがって、アンサンブル予報では、個々の数値予報の結果に含まれる系統的な誤差を減らすことが「できる」ではなく「 できません 」ので、答えは 誤 です。
⑧アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果では、各予報要素間の物理的な整合性は保障されていない。
アンサンブル予報では、複数の予測メンバーそれぞれが 物理法則に基づいた整合性 を持っています。
しかし、これらのメンバーの予報値を単純に平均した アンサンブル平均 は、あくまで統計的な期待値であり、物理的なつじつま合わせは保証されていません。例えば、気圧や風速といった連動する要素を別々に平均すると、実際には存在し得ない中間的な状態が生まれることがあります。つまり、アンサンブル平均は物理的に整合した一つの予報結果ではなく、予報の不確実性を示すための 統計的な指標 として理解する必要があります。したがって、アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果では、各予報要素間の物理的な整合性は保障されていませんので、答えは 正 です。
⑨アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果は、個々のメンバーのどの予報結果よりも常に精度が良い。
アンサンブル予報では、複数の予報メンバーを使って予測を行い、その平均値をとることで 全体の傾向 を把握します。
この平均値は極端な予測を抑えるため 安定 した結果を示しやすいですが、必ずしもすべての個々のメンバーよりも精度が 高いわけではありません。
実際には、特定のメンバーが平均値よりも 正確な予報 を出す場合も十分にあり得ます。
これは、予報対象の現象や状況によって、あるメンバーの予測が 偶然に良い結果 をもたらすことがあるためです。したがって、アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果は、個々のメンバーのどの予報結果よりも 常に精度が良いとは限りません ので、答えは 誤です。
⑩1週間先までの天気予報は、全球モデルとともに、全球モデルと同じ水平解像度をもつ全球アンサンブル予報モデルも使用している。
1週間先までの天気予報には全球モデルと全球アンサンブル予報モデルの両方が使われていますが、全球モデルの解像度は 約13km であるのに対し、全球アンサンブル予報モデルの解像度は 18日先 までは 約27km、19日以降 は 約40km となっています。
これは、アンサンブルモデルの 計算負荷 を抑え、複数のメンバーで安定して予測を行うための工夫です。
したがって、1週間先までの天気予報は、全球モデルとともに、全球モデルと「同じ」ではなく「 異なる 」水平解像度をもつ全球アンサンブル予報モデルを使用していますので、答えは 誤 です。
⑪季節アンサンブル予報システムでは、地球全体を予報領域としているが、大気と海洋とで水平解像度が異なっている。
季節アンサンブル予報システム では、地球全体を予報領域としていますが、大気と海洋で 水平解像度 が異なります。大気モデル の解像度は 約55km であるのに対し、海洋モデル は 約25km とより細かく設定されています。
これは、海洋の変動が大気の変動に大きな影響を与えるため、海洋の状態をより詳細に捉える必要があるためです。
また、計算資源を効率的に使いながら、大気と海洋の物理過程を適切に表現するために、このような 解像度の違い が設けられています。したがって、季節アンサンブル予報システムでは、大気と海洋とで水平解像度が異なっていますので、答えは正です。


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