S3気象レーダー観測19問1周目完了

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①気象レーダーは、発射した電波と戻ってきた電波の周波数がずれること (ドップラ一効果) を利用して降水強度を観測している。🔴

気象レーダー(ドップラーレーダー)は、

  • 雨や雪までの 距離 を発射した電波が 戻ってくるまでの時間 から測り、
  • 降水強度 を戻ってきた 電波(レーダーエコー)の強さ から、推定します。
  • 雨や雪の動き(=降水域の風)戻ってきた電波の周波数のずれ(=ドップラー効果)から、推定します。
  • 答えは 誤 です。

②電波が発射されてから反射されて戻ってくるまでの経路上に強い降水がある場合、それより遠方の降水からのエコーは実際よりも強く観測される傾向がある。🔴

電波が発射されてから反射されて戻ってくるまでの経路上に強い降水がある場合、それより遠方の降水からのエコーは実際よりも「弱く」観測される傾向がありますので、答えは 誤 です。

③気象レーダーで観測される異常伝搬に伴うエコーは、観測データの品質管理によって完全に取り除くことができる。🟢

気象レーダーが発射する電波は、通常なら直進して山岳や建造物などの上空を通過しますが、大気の屈折率の分布状態によって電波が曲げられ、通常の伝搬経路から大きく外れることがあります。この現象を 異常伝搬といいます。答えは 誤 です。

④二重偏波化したレーダーでは、水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅の比から、雨の強さを推定している。🔴🔴

このレーダーが利用するデータの中に「水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅の比」というパラメータがありますが、これは降水粒子(雨粒や霧雨、雹など)の形状を推定するためのものです。
例えば、霧雨や雹は球形に近い粒子であるのに対し、雨粒は大きくなるにつれて 扁平 になるという性質があります。この形状の違いは、水平偏波と垂直偏波の「反射波の 振幅の比 」に現れます。
この比を解析することで、降水粒子の縦横の比を把握し、その形状を推定することができます。
したがって、二重偏波化したレーダーでは、水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅の比から、「雨の強さ」ではなく「 降水粒子(雨粒や霧雨、雹など)の形状 」を推定していますので、答えは 誤 です。

⑤ドップラーレーダーの観測対象は非降水時の風の分布や低層ウィンドシアーである。🔴

ドップラーレーダー とは、レーダーから発射した電波が降水粒子に反射して戻ってくるまでの時間や強度から 降水強度の分布 を測定し、反射される電波のドップラー効果から 降水域における風の分布 を測定する気象測器です。一般に、気象レーダー とは、アンテナを回転させながら電波(マイクロ波)を発射し、半径数百kmの広範囲内に存在する雨や雪を観測する気象測器です。

発射した電波が戻ってくるまでの時間から、雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波(レーダーエコー)の強さから、雨や雪の強さを推定します。この気象レーダーが進化して、戻ってきた電波の周波数のずれ(= ドップラー効果 )による、雨や雪の動き(=降水域の風)も観測できるようになったものが ドップラーレーダー です。気象庁では1954年に気象レーダーの運用を開始し、2013年に国内全ての気象レーダーがドップラーレーダーに更新されました。(参考:気象庁報道発表資料「全国 20 か所の気象レーダーが全てドップラーレーダーになりました」)

また、2020年3月からは二重偏波ドップラーレーダーへの更新が進められています。2024年3月時点では、全20か所のうち14か所が二重偏波ドップラーレーダーに更新されています。

二重偏波ドップラーレーダー とは、水平方向と垂直方向に振動する電波(=水平偏波と垂直偏波)を用いる気象レーダーのことで、これまでのドップラーレーダーに比べて、降水粒子の種類(雨、雪、氷の粒など)が正確に判別できるようになったり、降水強度の観測精度が向上したりしています。したがって、ドップラーレーダーの観測対象は「非降水時の風の分布や低層ウィンドシアー」ではなく「 降水強度の分布、降水域における風の分布 」ですので、答えは 誤 です。

ドップラーレーダーの観測対象は「 降水強度の分布、降水域における風の分布 」

⑥降水粒子は、粒が小さいものより大きいものの方が、また、液体の状態であるよりは固体である方が、気象レーダーの電波をよく反射する、という性質がある。🔴

気象レーダーは、アンテナから電波を発射して、雨や雪などの降水粒子から反射(後方散乱)され戻ってきた電波を同じアンテナで受信することで、降水粒子までの距離や降水強度を推定します。
後方散乱 とは、アンテナから発射された電波が、降水粒子に当たって散乱(具体的にはレイリー散乱)したもののうち、アンテナの方向にはね返ってくる電波のことをいいます。
また、気象レーダーの電波が降水粒子に当たり、

後方散乱させることのできる有効的な面積のことを 後方散乱断面積 といいます。簡単にいうと、後方散乱断面積とは、気象レーダーの電波をアンテナの方向へ後方散乱させることのできる範囲のようなものです。

この後方散乱断面積の部分に気象レーダーの電波が当たれば後方散乱することができ、気象レーダーはその反射された電波を利用して 降水強度 を観測することができます。後方散乱断面積は、降水粒子の粒の大きさで決まり、粒が 大きい ほど、後方散乱断面積は 大きく なります。

つまり、降水粒子の粒が 大きい ほど、後方散乱断面積は 大きく なるので、降水粒子の粒が小さいものより 大きい ものの方が、気象レーダーの電波を よく反射する ことができる、というわけです。

では、同じ大きさの雨と雪であれば、どちらが気象レーダーの電波をよく反射するのでしょうか?結論から言うと、気象レーダーは、仮に同じ粒の大きさの雨(液体)と雪(固体)があったとすると、雨(液体)の方が、雪(固体)よりも強く反射する という性質があります。

雪というのは、雪の結晶ともよばれるように、その形がさまざま(雪の結晶は気温と湿度によって変化する)で、基本的には下図のように、球形ではありません。

このことから、レーダーの電波が雪に当たったとしても、とんでもない方向にはね返ってしまうことがあります(これを 乱反射 という)ので、レーダーの方向に、はね返りにくく(つまり後方散乱が小さく)なり、観測しにくくなります。

また、雪はその中に 空気が混在 していること(混じること)が普通です。

つまり、レーダーの電波が、その空気が混在している部分(つまり隙間のある部分)を、そのまま通り抜けることがあり、通り抜けるということは散乱できず、レーダーの方向に波がはね返ってこないので、観測しにくくなるのです。

したがって、降水粒子の大きさが同じ場合、固体(雪やあられ)の状態であるよりは、液体(雨)である方が、気象レーダーの電波をよく反射することができます。

実際に、雨は雪よりも 約5倍大きく 観測されると言われています。

以上より、降水粒子は、粒が小さいものより大きいものの方が、また、「液体の状態であるよりは固体である方が」ではなく「 固体の状態であるよりは液体である方が 」、気象レーダーの電波をよく反射しますので、答えは  です。

⑦図は、雪片が融解して雨滴に変わる「融解層」によって、局所的に環状の強いエコーが観測されたもので、「エンゼルエコー」と呼ばれている。🔴

冷たい雨において、雪が融けはじめて、雨に変わる場所のことを 融解層 と呼び、特に気象レーダーの電波が強くはね返される、という特徴があります。この、融解層で気象レーダーの電波が強く跳ね返される領域を ブライトバンド(明瞭に輝いた帯状に観測されるという意味)といい、一般的に層状性降雨に伴って発生します。では、なぜブライトバンドができるのでしょうか?
降水粒子は、粒が小さいものより 大きい ものの方が、また、固体であるよりは 液体 である方が、気象レーダーの電波をよく反射します。
また、雨粒 は、液体でレーダーの電波を 反射しやすい ですが、粒が小さい という特徴があります。
雪片 は、粒が大きい ですが、固体なのでレーダーの電波を あまり反射しません。
ぞれ は、表面が液体で覆われているため液体としての反射の性質を持ち、粒も大きいので雨粒や雪片よりも気象レーダーの電波を 強く反射 することができます。
つまり、みぞれ は雨粒と雪片のいいとこ取りをした状態で、レーダーの電波をより 強く反射 することができる、というわけです。
したがって、雪片が融解して雨滴に変わる「融解層」によって、局所的に環状の強いエコーが観測されたものは「エンゼルエコー」ではなく「 ブライトバンド 」と呼ばれていますので、答えは 誤 です。

⑧気象レーダーの観測はアンテナを一定の仰角で回転させて行われており、図のような環状のエコーが観測されたということは、融解層がほぼ一定の高度で水平方向に広がっていたことを示している。🟢

気象レーダーの観測はアンテナを一定の仰角で回転させて行われており、ブライトバンドが観測されたということは、融解層がほぼ一定の高度で水平方向に広がっていたことを示しているので、答えは 正 です。

⑨気象レーダーから水平に発信された電波は地球表面に沿うように曲がりながら伝播するが、レーダーからはるか遠方では低高度の降水を観測できなくなる。🟢

レーダーからの電波は大気の屈折率によって下方に曲がりながら伝播しますが、その曲がり方は地球の曲率に比べて 小さい です。そのため、電波はレーダーから 遠い ほど、地表面から 離れて いきます。
例えば、レーダーから約300km離れた地点の電波の高さは 約6km となり、低高度の降水は観測できなくなります。したがって、答えは 正 です。

⑩降水強度が同程度でも、レーダーから降水までの距離が倍になると、エコー強度は2分の1になる。🟢

エコー強度は 距離の2乗に反比例 するので、距離が倍になるとエコー強度は「2分の1」ではなく「 4分の1 」になります。したがって、答えは 誤 です。

⑪気象庁の気象ドップラーレーダーでは、風に流される降水粒子から反射される電波のドップラー効果を用いて、レーダーに近づく風の成分を測定することはできるが、遠ざかる風の成分を測定することはできない。🟢

気象ドップラーレーダーは、降水の位置や強さだけでなく、風に流される降水粒子から反射される電波のドップラー効果を用いて、レーダーに近づく 風の成分と遠ざかる風の成分を測定することができます。これを ドップラー速度 と呼び、レーダーから見て 真横 に移動する速度はドップラー速度が 0 となります。したがって、答えは 誤 です。

⑫同じ雨量をもたらす降水ならば、雨粒の直径が大きくて単位体積あたりの雨粒の数が少ない降水と、雨粒の直径は小さいが雨粒の数が多い降水のエコー強度はほぼ同じになる。🟢

エコー強度は雨粒の 大きさに比例 するため、雨粒の 直径が大きい ほど 強いエコー が観測されやすくなります。したがって、同じ雨量をもたらす降水ならば、雨粒の直径が 大きくて 単位体積あたりの雨粒の数が 少ない 降水の方が、雨粒の直径は 小さい が雨粒の数が 多い 降水のエコー強度よりも 強く なりますので、答えは 誤 です。

⑬気象レーダーでは降水エコーが観測されているのに、直下の地上では降水が観測されないことがある。🟢

気象レーダーでは降水エコーが観測されていても、降水粒子が落下する途中で 蒸発 したり、下層の風 に流されたりすることで、降水粒子が直下の地上に到達せず、地上では降水が観測されないことがあります。したがって、答えは 正 です。

⑭気象レーダーで観測される海面の凹凸や波しぶきからの反射であるシークラッタは、強風時ほど多く観測される。🟢

シークラッタ とは、降水のない海面上の波や波しぶきに電波が反射して生じる 非降水エコー のことです。主に、波しぶきが立ちやすい 強風時 に多く発生します。したがって、答えは 正 です。(ちなみに、シークラッタを英語で書くと「sea clutter」です。clutterはもともと「散らかったもの」「乱雑」という意味で、レーダー分野では「目標以外の不要な反射波」全般を指します。なので、地表面からの反射は「グランドクラッタ(ground clutter)」、海面からの反射は「シークラッタ(sea clutter)」となります。)

⑮気象レーダーでは、降水エコー以外にも強い地形エコーを観測するが、これはコンピュータで完全に除去することができる。🟢

グランドクラッタ(地形エコー)とは、山岳や建物、樹木などの地上構造物からの電波反射による非降水エコーをいいます。地形のように動かないものが原因のグランドクラッタは降水のエコーと区別して 取り除くことができます。しかし、風で揺れる樹木や大型の風車の羽やスキー場のリフトなどのように 動くものが原因 のグランドクラッタや、エコー自体が 非常に強い 場合は、データの品質管理において 完全には取り除くことはできません。したがって、答えは 誤 です。

動かないもののエコーは取り除けるが、動くものは取り除けない

⑯気象レーダー観測では、グランドクラッタやシークラッタ以外にも、実際には降水がないのに現れるエコーがあり、これをエンゼルエコーという。🟢

エンゼルエコー とは、大気層の気温や水蒸気分布によって生じる電波の屈折率異常のほか、昆虫や鳥の群れなどによって生じる非降水エコーのことです。晴天エコー と呼ぶこともあります。
したがって、答えは 正 です。
(ちなみに、エンゼルエコーという名前は、イギリスのレーダー技術者たちが正体不明のエコーをまるで天使(angel)のようだとジョーク半分に例えたことがきっかけです。その後、1940年代後半にはOxford English Dictionary(OED)にも「説明不能なエコー」を指す専門用語として登録され、レーダー分野で広く使われるようになりました。)

⑰気温が高度とともに急激に上昇している層では、異常伝搬が発生しやすい。🟢

気象レーダーから放射される電波は、通常なら直進して山岳などの上空を通過します。
しかし、大気の屈折率が高度によって変化すると電波が曲げられ、通常の伝搬経路から大きく外れることがあります。この現象を 異常伝搬といいます。大気の屈折率は 気温や湿度などによって決まるため、異常伝搬は、気温が高度とともに急増 するなど 屈折率が高さ方向に大きく変化する場合に発生します。
具体的には、高気圧内の下降気流 や 夜間の放射冷却、海陸風 による温度の異なる空気の移流などが挙げられます。
また、海上 は地形の起伏がない分、異常伝搬の原因となる大気構造を安定して形成しやすいといった特徴があります。したがって、答えは 正 です。

⑱竜巻は、気象庁の気象ドップラーレーダーで観測されるドップラー速度の解像度で直接検出することができる。🟢

気象ドップラーレーダーで観測されるドップラー速度の解像度では、直径が数10~数100mの 竜巻を直接検出することはできません。しかし、気象ドップラーレーダーで観測した風のデータから、竜巻の発生と関連が深い直径数kmの メソサイクロン の存在を推定することは可能であり、竜巻の有効な予測手段の1つとして活用されています。したがって、答えは 誤 です。

⑲気象庁の気象ドップラーレーダーでドップラー速度を観測できる最大距離は、降水粒子を観測できる最大距離よりも短い。🟢

気象庁の気象ドップラーレーダーには、パルス繰り返し周波数(PRF)という機能があり、1秒間に送信する電波パルスの数を指します。PRFが 低い ほど、広範囲の降水強度 を測定できますが、ドップラー速度の観測はできません。一方、PRFが 高いほど、観測範囲は 狭まりますが、降水粒子とドップラー速度の両方 を観測することができます。実際に、気象庁の気象ドップラーレーダーでは 低PRF、中PRF、高PRF の3種類のPRFを用いて観測を行っています。したがって、ドップラー速度を観測できる最大距離は、降水粒子を観測できる最大距離よりも短いので、答えは 正 です。

専門 観測成果の利用:気象レーダー観測 (19)

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